【正解】D
【0からの解説】
① 前提知識・
Transfer Appliance は、Google から物理的なストレージ アプライアンス(TA40 / TA300 などのモデル)を借り、データセンター内の高速な LAN でデータをコピーしてから Google に返送し、Google が Cloud Storage にアップロードするオフライン転送サービスです。データは AES-256 で暗号化され、Cloud KMS の顧客管理の暗号鍵(CMEK)も使えます。アップロード後のアプライアンスは NIST 800-88 準拠で消去されます。
・公式ドキュメントでは「ネットワーク経由でのアップロードに 1 週間以上かかる場合」が Transfer Appliance の適用目安とされています。目安の所要期間は、アプライアンスの受け取りと 300 TB のデータ取り込みで約 25 日、その後 Cloud Storage でデータが使えるようになるまで約 10 営業日です(容量に応じて複数台を注文します)。
・
Storage Transfer Service はオンライン転送サービスです。オンプレミスからの転送では社内にエージェントを置き、既存のネットワーク回線経由でデータを送ります。
② 要件と制約語の整理・
500 TB を
1 回限り移行する(継続的な同期ではない)。データセンターは廃止予定。
・回線は
1 Gbps で、
重要な業務処理と共用されている(=転送で帯域を使い切れない)。
・
60 日以内に
安全に完了させる。
・計算してみると、500 TB = 500×10
12 バイト = 4×10
15 ビットです。1 Gbps(10
9 ビット/秒)を 24 時間 100% 使い切っても 4×10
6 秒 ≒
約 46 日かかります。実際にはプロトコルのオーバーヘッドがあり、しかも業務と共用のため帯域の一部しか使えないので、60 日以内の完了は現実的ではありません。
③ 正解 D が要件をどう満たすか・Transfer Appliance へのコピーはデータセンター内の高速 LAN で行うため、業務と共用の 1 Gbps インターネット回線をまったく消費しません。
・約 25 日+約 10 営業日という目安から、60 日の期限内に収まる見込みが立ちます。
・AES-256 暗号化(CMEK も可)と返却後の確実なデータ消去により、金融データの「安全な転送」の要件も満たします。1 回限りの大容量移行に新しい回線契約などの恒久的な投資が不要な点も、廃止予定のデータセンターに適しています。
【誤りの選択肢】
A:10 Gbps の Partner Interconnect があれば転送時間自体は短縮できますが、サービス プロバイダとの契約、データセンターからプロバイダまでの物理回線の手配、VLAN アタッチメントや Cloud Router の構成など、開通までに数週間単位のリードタイムがかかり、60 日の期限に対して大きなリスクになります。また、廃止するデータセンターのために 1 回限りの転送用として専用接続を調達するのは費用対効果も悪く、過剰な対応です。
B:公共のインターネット経由で、しかもオフピーク時間帯だけに限定してアップロードすると、利用できる帯域と時間がさらに減るため、帯域を 100% 使っても約 46 日かかる 500 TB の転送を 60 日以内に終えることはできません。手作りのスクリプトでは再試行・整合性検証・進捗管理も自前になり、運用負荷も高くなります(なお、gcloud storage cp は既定で並列転送を行い、--parallel というフラグを指定する使い方は一般的ではありません)。
C:エージェント ベースの Storage Transfer Service は再試行や整合性検証を備えたマネージドな転送ですが、データは結局、重要な業務と共用している 1 Gbps の回線を通ります。帯域を使い切れば業務に影響し、帯域を制限すれば 60 日に間に合いません。回線容量そのものがボトルネックである点を解決できません。
【参考】
Transfer Applianceデータ転送オプション | Storage Transfer Service